社会彫刻家基金 2021
新型コロナウイルス拡散後の「新しい日常」において、
アートを触媒に社会に変化を創り出すアーティストを支援する
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2020年に設立された社会彫刻家基金は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う新しい日常において、アートを触媒に社会の変化を創り出すアーティストを支援するための基金です。インビジブルと株式会社モーションギャラリーが共同で運営し、あらゆる人間は自らの創造性によって社会を形作る彫刻家であるというヨーゼフ・ボイスの社会彫刻の概念を体現する表現者を支えています。既存の芸術の枠組みを超えて、教育や福祉、地域課題といった現場で活動する人々を発掘し支援することで、その可能性を社会全体に拡大する役割を担います。正解のない日常の中で、アートが闇を照らす灯台のように進むべき方向を指し示す存在となることを目指しています。
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支援のあり方の議論と基金の創設
本基金はコロナ禍の緊急事態宣言下において、全国の文化施設を支えるエイド基金の立ち上げを端緒としています。現状の困難に対する応急処置に留まらず、本質的な社会変化や日常を転換させる活動をいかに支援すべきかという議論が深められました。その結果、ヨーゼフ・ボイスの社会彫刻という概念を現代的に再解釈し、社会に変化を生み出すアーティストを認知・支援する仕組みとして共同創設されました。
社会彫刻家アワードによる実践者の選定
最初の具体的な取り組みとして社会彫刻家アワード2021を実施しました。既存の美術の枠組みに捉われず、社会との関わりの中で活動する表現者を対象とし、専門家によるリサーチと協議を重ねました。選考過程では、単なる作品の評価ではなく、障害や地域の歴史といった困難を背負いながら建設的な場所づくりを行う運動体としての性格や、切実な必要性に突き動かされた活動のあり方を重視しました。
記録と発信を担うガイドブックの制作
アワードに続く二つ目の取り組みとして、書籍へその制作プロセスを歩みました。受賞者の活動拠点である北海道や広島への現地取材を行い、彼女たちが直面する現場のリアリティや活動の背景にある思想を丁寧に掬い上げました。この書籍の制作費をクラウドファンディングで募ること自体も、社会彫刻の概念を体感し、社会参加を促す大切なプロセスとして位置づけられました。
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既存の枠組みを超えた表現活動の可視化
アワードを通じて、自らをアーティストと名乗らない人々も含め、福祉や地域コミュニティの現場で重要な役割を果たす表現者たちの存在を可視化しました。アイヌのルーツを巡る探究や、障害児ケアとアートの融合、歴史的背景を持つ集合住宅での場づくりなど、社会の隙間を埋める多様な営みを社会彫刻という文脈で捉え直し、その価値を社会へ提示することに成功しました。
実践者と支援者をつなぐ物語の編纂
書籍へそを刊行したことで、各地の社会彫刻家の生き様や試みを一つの物語として編纂しました。これは単なる記録集に留まらず、読者が自らの中にある社会彫刻家としての意識に目覚め、行動を起こすためのガイドブックとしての役割を担っています。書籍を通じて社会変革のプロセスが共有され、物理的・化学的な変化を社会に生み出すための触媒としての機能が果たされました。
継続的な対話と共創のプラットフォーム形成
一連の活動により、主催者、選考委員、受賞者、そして支援者たちが対等に対話できる関係性が構築されました。受賞者がアワードをきっかけに拠点の名称を変更するなど、基金との出会いが新たな表現や活動の展開を生む契機ともなっています。
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受賞者:オルタナティブスペースコア 、ボーダレスアートスペース HAP、マユンキキ
審査員:ヴィヴィアン佐藤、卯城竜太、飯田志保子
主催:株式会社モーションギャラリー、NPO法人インビジブル